パソコン通信時代とインターネットの熱量の差

http://d.hatena.ne.jp/kanose/20060209/bbstalking

 「ARTIFACT@ハテナ系」にて、パソコン通信時代を振り返りつつ、ネット上での人々のコミュニケーションの方法や心構え等の差などについてのお話。本来は他2サイトでのやりとりなんだけど、リンクで一つにまとめているのでこちらをメモしとく。

 僕自身は1993年からパソコン通信を始め、1998年にインターネットに移ってきた。パソコン通信時代は県内草の根BBSを幾つかまわり、その後県外の草の根をいくつかと「ゆいnet」という当時DTMを中心に扱ったホストとしてはかなり大きいところに出入りしたり、NiftyServeでゲーセン関連情報を漁ったりしていた。
 インターネットに繋ぎ始めた頃は、各プロバイダが個人用ウェブサイトのスペースのサービスを始めた頃くらいで、レンタルBBSの最大手はteacup、アングラな場所への入り口はあめぞうとか、そんな時代。やはり僕も、その当時はパソコン通信時代との熱量の差を感じて「あー、あの頃が一番面白かったのになー」と思っていた。しかし時が過ぎ、パソコン通信時代よりインターネットに触れている期間の方が長くなった今となっては、その印象はかなり変わってきている。

 ホストに接続するためには殆どの場合どうしても自宅の固定電話を使ってモデムで直接接続することになること、またNifty等大手ホストの場合は実名で登録してIDを発行してもらう方式だったため、それぞれ個人を特定しやすい環境にあった、というのはどこでも指摘されているところ。
 でもやっぱり、あの頃の熱気の高さを支えていたのは「仲間意識の高さ」ということになるのだろうが、それが形成される要因に「他に選択肢が無いという強迫観念」(当時のネット界隈はかなり狭かったため、追い出されると他に行き場が無くなる可能性が高くなる)と、これが相乗効果となってより大きな「馴れ合いの強制」へと発展していくのだと思う。ネット自体がすごくマイナーな趣味として捉えられていたこともあり、ネットという趣味を共通項として集まったとも言える。
 それがインターネット主流の時代になって「参加者の激増」という、古参からすればあり得ない現象が起こった。ネットが普及した2000年以降は、とりあえずホームページ作っちゃおうぜ的なノリで始めて「私って先進的でしょ」といった人がかなり多くなったため、これまでのネットのノリや空気を読めない「新参者」がどんどんと増え、古参の目には全体的に薄まったように映っていた。
 また、あの当時は自分の居場所を作るためのハードルがとても高かった。どこかのBBSに参加する以外の方法でネット上に居場所を作るには、自分でホストを立ち上げるくらいしか方法が無かったように思う。そしてマシンを設置して、電話番号を公開して参加者を募ることになるのだが、維持と初期投資にかなりのコストを強いられ、利用者数が増えれば増えるほどその管理が難しくなる。それを考えると、今は無料でサイトやブログが簡単に作れるし、ネットに接続している人が桁違いに多くなっているから、居場所づくりに困らないしそのつきあい方も選べるようになっている。

 で、昔の方が真剣なやりとりがあった、という語り口は、僕にはあまり現実味を感じない。少なくとも僕が出入りしていた草の根BBSでは、そのコミュニティ内での話だけで終始していて、現在のネットの様に「不特定多数が読む事を意識したテキスト」ではなく「そのホストに出入りする数十名に向けたコメント」といった内容ばかりだった。地域的な話題になったらもう殆どの場合ついていけなくなる(僕は沖縄とかなりの僻地なのでついて行けない話題がかなり多かった) 単純に、個人が特定されやすいから発言が慎重になるだけであって、あまり内容的には変わってないように感じられるのだけどなあ。あの頃のテキストのやりとりの方が面白かったという人は、僕から見れば「とても良いコミュニティに入れた、運の良い人なんだろーなー」と羨ましく思う。
 ネット人口が激増しているため、ヘンに無責任な会話ばかりしている人が多数となって目立っているように感じているだけかもしれない。匿名性を基本とする掲示板が勢力を増していて、見えない位置からやんややんやと騒ぎ立てる人が大量発生していることも事実だけど、だからといって別に各々のネット上のコミュニケーションに熱が籠もらなくなったわけじゃないはずで、それはテキストサイトやブログ行われる色んな意見のやりとりが実証している(偏見だと言われそうだなあ・・・)
 乱暴に言えば「パソコン通信時代のホスト=友達ん家」「インターネット=市街地」「SNS=どこかお店の中」で喋ってると言えるんだろうな。家の中ならある程度防音もされるわけで、声高に何か発言しても外には漏れにくく、お互いの顔が見えているので安心する環境。SNSは家ほどクローズドではなく、同じテーブルに人が集まってわいわい喋ってて、人によってはテーブルを行き来しているようなイメージ。

 しかしまあ考えてみれば、パソコン通信時代に戻りたければレンタルサーバでシステムを構築し、ログインの際にIDとパスワードを要求すればいいってだけの話になったんだよな。そのコストも昔に比べれば数十分の1だろうし。でもその中でどれだけ有意義な話が出来るだろう? ローカルな話題が増えたってだけで、実質何にも変わらないってことになるよーな気がするんだけどなあ。


 なんかすごくまとまってない文章になってるよーな気がする・・・これについての考察は継続してやってくことにする。